社会福祉法人 札幌緑花会

札幌地区 緑ヶ丘療育園

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緑ヶ丘療育園ーてんかんミニ知識

第19回 ラコサミド(ビムパット)

2018-08-24

 ラコサミド(ビムパット)は2016年8月に発売された日本で最も新しい抗てんかん薬です。ビムパットの効能・効果は16歳以上のてんかん患者の二次性全般化発作を含む部分発作ですが、単剤投与も可能です。小児の適応はまだ取得されていませんが、年内には取得される予定と聞いています。

 ビムパットは新しい作用機序をもつ抗てんかん薬です。フェニトイン(アレビアチン)、カルバマゼピン(テグレトール)、ラモトリギン(ラミクタール)は作用機序としてナトリウムチャネルの急速な不活性化を促進させますが、ビムパットはナトリウムチャネルの緩徐な不活性化を選択的に促進させることによりニューロンの過剰な興奮を抑制して抗てんかん作用を発揮するとされています。すなわち、ナトリウムチャネルの不活性化の促進が急速なアレビアチン、テグレトール、ラミクタールに対して、ビムパットはナトリウムチャネルの不活性化の促進が緩徐であるということが作用機序の違いとなります。一般的に同じ作用機序の薬剤を重ねて使用することは避けるのですが、ビムパットをアレビアチン、テグレトール、ラミクタールと併用することは上述のように作用機序が異なるため可能です。

 ビムパットの効果に関しては抗てんかん薬の使用歴が7剤以上であっても25.8%の患者に部分発作消失が認められたとの報告があり、既存薬では十分な効果を示さない部分発作の患者に対しても有効性が期待できます。

 ビムパットは主な副作用として浮動性めまいがありますが、眠気や精神症状は少ないといわれています。抗てんかん薬にはレベチラセタム(イーケプラ)、トピラマート(トピナ)、ペランパネル(フィコンパ)、ラミクタールなどをはじめ精神症状をきたすものがあり、自閉症や情緒障害のある患者には使いにくいことがありますが、ビムパットはこのような患者にも使用することが可能です。
 また、テグレトールやラミクタールは薬疹の副作用が問題になりますが、ビムパットは薬疹のリスクが少ないといわれています。しかし、テグレトールやラミクタールで薬疹が出現した既往がある患者にビムパットを使用する場合には薬疹のリスクが高まる可能性があることに注意が必要で、投与する前に予め患者に薬疹が出た際の対応の仕方を指導しておくことが重要です。

 このように、ビムパットは新規作用機序を有すること、良好な有効性と安全性が認められていること、臨床的に重要な薬物相互作用が認められないこと、線形性で用量依存的に血中濃度が上昇するなど良好な薬物動態プロファイルを有すること、てんかん患者での服薬継続率が高いこと、骨代謝や脂質代謝への影響が少ないことなど、多くの利点を有する抗てんかん薬として位置づけられています。
 したがって、多くの国で部分発作にはイーケプラやラミクタールに次いでビムパットが使用されるようになってきています。
 ただし、ビムパットは催奇形性についてのデータが未だ十分ではないため、現時点では妊娠可能女性への投与の安全性は確認されていません。今後催奇形性に関する安全性が確認されれば、ビムパットは妊娠可能女性にも使用可能となります。

てんかん外来  皆川 公夫