社会福祉法人 札幌緑花会

札幌地区 緑ヶ丘療育園

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緑ヶ丘療育園ーてんかんミニ知識

第12回 バルプロ酸(デパケン):その1

2017-04-07

 バルプロ酸(デパケン)は全般発作(強直間代発作、欠神発作、ミオクロニー発作、脱力発作、強直発作、間代発作)の第一選択薬ですので、てんかん診療において非常に使用頻度が多い薬剤です。

 特発性全般てんかんの小児欠神てんかんでは欠神発作に加えて強直間代発作もおこることがあるため、両方の発作に効くバルプロ酸を第一選択とすることが多いですし、若年ミオクロニーてんかんではミオクロニー発作と強直間代発作がおこることが多いので通常は両者に有効なバルプロ酸が選択されます。また、このような特発性全般てんかんだけでなく、ウエスト症候群、レンノックス・ガストー症候群、ドラベ症候群などの難治性てんかんにもバルプロ酸はよく使用されます。

 バルプロ酸は半減期が短いので服用開始後2~3日で効果を確認できるというメリットがあるのですが、反面バルプロ酸は血中濃度の日内変動が大きいため日内変動を小さくするように工夫された徐放製剤(デパケンR、セレニカR)を使用することもあります。

 バルプロ酸の有効血中濃度は50~100μg/mlですが、これを越えるような高血中濃度になると以下のような副作用が出てくることがあります。

 バルプロ酸が高血中濃度になると血小板の数が少なくなることがあります。出血傾向が出るほど低下することはまれですが、10万/μLを割るようなときは投与量を減量して血中濃度を下げることが必要になります。例えば、ふだんの血中濃度が80μg/mlだったのにクロバザム(マイスタン)を併用したら、血中濃度が120μg/mlに上昇して血小板が10万/μL以下に低下したということがよくみられます。

 また、いままでバルプロ酸の血中濃度が有効濃度内にあって月経が規則的だったのに、クロバザムを追加したら血中濃度が上がって月経が来なくなったという患者さんもいました。この場合もバルプロ酸の減量により血中濃度が元に戻ったら月経が来るようになりました。

 さらに、バルプロ酸の血中濃度が高くなると血液中のアンモニアが高くなったり、カルニチンが低下したりすることもあるので注意が必要です。カルニチンについては前回の第11回のてんかんミニ知識で解説しましたので、参照してください。

 次回はバルプロ酸:その2を予定しています。

てんかん外来  皆川 公夫